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紀南抄「手品とコミュニケーション」

 マジック。それは、見る者を不思議な世界にいざなってくれる芸能である。実際には合理的な原理を用いているが、巧みな手さばきや道具を使って、あたかも現実では起こり得ない出来事が眼の前で起きているかのように錯覚させる。

 「タネや仕掛けはございません」というのは定番の決まり文句だが、もちろん実際にはタネや仕掛けがある。先日、マジック教室を取材した際、ロープとリングを使った手品を体験させてもらった。仕組みや理論は理解でき、それを実践することもできた。しかし、見せ方がとても難しかった。
 
 タネにばかり意識が向きがちだが、本当に重要なのは観客の視線や意識をどこに向けるかという演出である。話術や間の取り方、ちょっとしたしぐさによって、観客は自然と術者の描くストーリーの中に引き込まれていく。
 
 それは日常のコミュニケーションにも通じると思う。伝える内容だけでなく、伝え方一つで大きく印象は変わる。相手の心を動かすには、心の裏にある工夫や気配りが欠かせないのだと、マジックの奥深さから改めて感じた。
 
【織】
 

      紀南紗

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