紀南地方では今、サクラが真っ盛りである。少し肌寒い陽気が続いているが、どこもかしこも満開で、私たちの心を暖かくしてくれている。新宮城跡ではライトアップが行われており、夜桜鑑賞も楽しむことができる。
日本の桜の代表格であるソメイヨシノは、オオシマザクラとエドヒガンザクラをかけ合わせて江戸末期に作られた品種で、明治以降、全国に広がった。接ぎ木や挿し木による増殖で、遺伝的にすべて同じクローン。このため、気象条件が同じ地域では一斉に開花するのだという。
一方、山などにポツンと自生しているのを見かけるヤマザクラ。野生種の1つで、同一地域の個体群内でも個体差が大きく、花や新芽の色、木の形などばらつきがある。植物に詳しい先生の話では、開花時期にも1か月ほどの差があるという。
取材を終えてデスクでノートを開いた時、ひとひらのサクラの花びらが落ちてきた。「かわいい」と、思わず口に出しそうなぐらいうれしい気分になった。ピンク色の花びら1枚で人を幸せにしてくれるサクラは偉大である。
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