祖父の古いカメラをもらい受けた。
フィルムを持っていないのでカメラ屋に買いに行く。買ったこともないので、店員に聞きながら選んだ。昔は数百円で買えたというが、今は36枚撮りが1つ2000円を超える。需要が極端に減り、価格を上げないと生産が続けられないのだろう。思わぬ金額に驚きながら、それも時代の流れかと受け入れつつ、1つだけ買って帰った。
祖父は自分が生まれる前に亡くなっているので、会ったことはない。もらったカメラは祖母の家に保管してあったもので、1960年代製だった。
父に手ほどきを受けながらフィルムを巻き込むことに成功。ふたを閉めて、次はレンズの操作だ。昔のカメラはシャッタースピードやレンズの絞り、ISO感度までレンズに目盛りがついていてそこで調整するらしい。試しに叔母を撮ってみた。「パチリ」と小さな音がする。ちゃんと撮れただろうか。分からない。この不便さがまたよいと思えるのだから不思議だ。
常に目の前を流れる今この瞬間と、立ち止まって振り返るノスタルジー。それらをつなぐ営みをアナログが思い起こさせる。
【稜】