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紀南抄「東日本大震災から13年」

 13年前。札幌で中学2年生だった私は、卒業生を送る合唱の練習をしていた。放課後にいつも通り部活動の準備をしていると、顧問から「今日は帰るように」と指示があり、そこで初めて大きな地震があったことを知った。

 我が家の懸念事項は、長女の姉が大学試験のため青森にいたことだった。幸い宿が親切で滞在できたが、連絡も満足に取れない。心配した母は青森を目指すも、途中でJRが止まり足止めを食らった。次女の姉は心配してテレビにかじりついていたのを覚えている。

 数か月後、ボランティアに行く知人の誘いで岩手県釜石市に赴いた。死者・行方不明者1121人、全壊住宅2957戸という大きな被害を受けたところだった。更地に家の基礎だけが残り、がれきの山は一つ一つが生活の跡であった。冗談ではない。まちが飲み込まれたのだ。

 それが私の東日本大震災。あれから13年。いまだ避難生活を送る人々が多くいる。大切なものが次々と飲み込まれても、それでも生きねばならないのだと、胸に熱く切ないものがこみ上げる。犠牲者に哀悼を、今ある命に感謝をささげたい。

【稜】

      紀南紗

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