春はあらゆる生命が湧きたつ季節。虫も例外ではない。最近はどこから入ってきたのか、いつの間にか部屋の中に表れ、時折耳元で「プーン」という不快な音を鳴らしてくる。蚊である。
ビル・ゲイツ財団の2016年の発表によると、人間を多く殺している生物の1位は蚊だという。マラリアやジカ熱、西ナイル熱、デング熱など、蚊が媒介する感染症が毎年、多くの人の命を奪っている。2位が人間であるという事実もなかなか”えぐい”のだが、蚊という小さな虫が人類の最大の敵というのも衝撃的だ。
日本でも日本脳炎やデング熱などの症例が見られているが、やはりもっとも身近な実害はかゆみだろう。これは無視しておくわけにはいかない。特に夜。全ての電気を消して寝ようとしているところに、耳元で音だけを奏でてくるやつらに対しては、人類の言語を教育して日本のサラリーマンの睡眠がいかに重要かということをこんこんと説き続けたいような衝動に駆られる。
血を吸われるのは百歩譲っていいとして、せめてかゆみだけでもなんとかしてくれないだろうか。共生の道は遠い。
【稜】