白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」からジャイアントパンダ全4頭が6月末で中国に返還されるというショッキングなニュースが流れた。和歌山県の観光に6月以降、大きな影響が出るのは必至。パンダ目当てに白浜を訪れ、その後当地方まで足を延ばす観光客も相当数いる。そのような観光客が減る中、これまでの誘客戦略だけでは生き残っていけない。自治体をはじめ関係機関は危機感を持って対応に当たる必要があるだろう。
JR西日本と新宮~白浜間の沿線自治体などで構成する「紀勢本線活性化促進協議会新宮白浜区間部会」の会議が先日開かれ、特急くろしおの月~木曜日の増便を期間限定で行う方針を決めた。現行は大阪方面~新宮間の特急くろしおは月~木曜日往復5本、金土日祝往復6本だが、増便が決まれば月~木曜日も往復6本となる。5月中に近畿運輸局へ申請し、採択されれば11月から2027年3月まで増便となる。
輸送力を確保できても、利用促進につなげられるか。さまざまな仕掛けを行う必要がある。JR西日本の長距離観光列車「WEST EXPRESS銀河」は5年連続で紀南コースでの運行が決まっているおり、沿線自治体は銀河の運行に合わせて「おもてなし」を計画するが、利用客にメリットがあり、当地方の経済にも好循環をもたらす施策として平時にも取り入れることのできるものはないか。
ガソリン価格が高騰した2022年夏、石川県輪島市は同市内のホテルや旅館などに宿泊した人を対象に、車のガソリン代の一部を補助する取り組みを行った。指定された同市内のガソリンスタンドでの給油のため、外にお金が流れることはない。これを参考にJRきのくに線の特急利用で、降車駅のある自治体内の店舗でのみ有効の商品券配布はできないか。また、きのくに線の車窓からの眺めをもっとうまくPRすれば大きな“武器”になる。海岸線を走る路線ならでは真っ青な空と海の景色は、地元が考える以上に魅力があるようで、各自治体や観光協会等のホームページで動画を配信すれば“ファン”が増えることも期待できる。
繰り返しになるが、和歌山県の観光は6月で流れが変わる。先手の取り組みを求めたい。