命は不思議だ。立ち消えると、ついこの間まで隣で何気なく笑ったりしていた人が、もう動かない。何をどう考えても、逆立ちしても、もう話せない。
思えば当たり前の話。元々この世にいなくて、生まれて、亡くなる。蛍光灯の明かりにごまかされいつまでも続くような錯覚をしていては、そんな当たり前さえ受け入れられなくなりそうだ。やがて死すべき自分や周りとの折り合い。毎日の食事でいただいている命にも、大切な相手がいたのかもしれない。
死ぬとは、体から何がなくなることだろうか。生きている時は動いていたものが、どうして死ぬと動かなくなるのだろうか。いや、この問いはもしかしたら逆である。死んで体から抜け出すものをまとめて「魂」と呼んだのだ。では魂はどこへゆくのだろうか。生まれ変わりがあるなら、転生先は完全にランダムなのだろうか。新しく生まれつく命に優劣はあるのだろうか。考えてもわからないから、考えなくてもよいのだろうか。
ただ身近な人の死を思う時、その行く末が光多きものであるようにと。そういうものをまとめて「祈り」と呼んだのだ。
【稜】