地元の札幌市に住んでいた時。高校時代の友人が都会で精神的にまいってしまって、帰ってきている時期があった。友人と遊びたかったのもあって、山登りに誘ってみた。朝早く出かけて太陽の光を浴びながら足を動かし、呼吸し、汗を流す。山頂で昼食をとって下山し、最後は温泉にありがたくつかるまでがセットだ。それがよかったらしく、今でもたまに会うとその時の話をしてくれる。
何気なく、働いて、帰って、食べて寝て、また働いて、という暮らしをしていると、ずっと人間社会の中に身を置いていることになる。当たり前のようだが、そこから一歩離れてみると、圧倒的な自然の世界があることに気が付く。
自然のよさはいくつもある。例えば、嘘をつかない。お腹を空かせているのに餌を遠慮する鳥を見たことがあるだろうか。水量が増えたのに流れを強めず我慢する川を見たことがあるだろうか。いつだってあるがまま。たったそれだけの当然がありふれている。
自然の中に身を置いてみるだけで救われる。時間がある時に森で寝転んでみるだけでいい。きっと優しく迎えてくれる。
【稜】