子どものころから絵の評価が芳しくなく、苦手意識があった。美術の授業で風景画を描いた時、何の芸もなく緑の絵の具を塗りたくって山にした。濃い緑だったか、黄緑だったかも覚えていない。森も山もないまちで生まれ育ち、山や森に対しての想像力も感慨もありはしなかった。
豊かな自然に囲まれている今であれば、山は単色ではなく、色の異なる緑が敷き詰められていることが理解できる。小さなまちでも人には一人ひとり個性があるように、同じ森にあっても木によって緑の色合いが異なる。
戦後の人口動態を見ると、高度経済成長期では三大都市圏に人口が集中し、バブルとバブル崩壊後の都心回帰によって東京一極集中が進んでいる。都会での暮らしを否定するつもりはないが、自然に触れる機会と由縁が薄くならざるを得ないのは、人生の機会損失といえるだろう。
5月は新緑や若葉、薫風の候ともいわれる。尾鷲は緑と風が美しい季節を迎えている。面白くなく絵筆を雑に動かしていた自分にも見てもらいたかった。
(R)
