大型連休中の5月2日、奈良県を震源とする地震が発生し、新宮市や太地町、熊野市などで最大震度4を観測した。近年では体験していない強さの揺れと、スマートフォンから鳴り響く緊急地震速報に驚いた人も多いのではないか。本紙エリアの自治体ではこれまでに、けが人や民家等への被害の報告はされていないが、この機会にいま一度、防災について考えたい。
南海トラフ地震への備えの必要性は誰しも感じており、自治体や町内会、各家庭でそれぞれ対策が進んでいるが、地域によって差があるのも事実。そんな中、今回の内陸部の揺れは、決して「他人事」ではない。歴史を紐解けば、南海トラフ地震の発生前後には、内陸部での地震活動が活発化する傾向がある。今回の地震を、単なる一過性の現象として片付けるのではなく、いつ発生してもおかしくない「その日」に向けた、警告と受け止めるべきではないか。
あらためて今、取り組むべきことは何か。各自治体には備蓄状況を再確認してもらいたい。食糧に関してはこれまで通りの品をそろえるだけでなく、高齢化が進む状況を踏まえると、要介護者向けの非常食(介護食)も備えておきたい。さらに、備蓄から年月が経過しているものは状態を確認し、更新が必要なものは速やかに対応する。倉庫の形状によっては暑さや寒さの影響を受けたものがあることも考えられ、訓練同様に確認作業も定期的に行う必要がある。有事の際に使える状態に整えておくのは各自治体の責務だ。
また、「南海トラフ地震臨時情報」が発表された際、どのような行動をとるべきか。住民の間で十分な理解が進んでいるとは言い難い。自治体には、発表時の混乱を避けるため、具体的な避難勧告の基準や支援体制をより明確にし、広報紙やSNSなどあらゆる手段を使って住民に周知徹底を図ってもらいたい。
地震を防ぐことはできない。しかし、備えによって被害を最小限に抑える「減災」は可能。奈良県の地震で見えた一瞬の不安を、確かな備えへの力に変えなければならない。「備えあれば憂いなし」という言葉があるが、巨大地震では「備えなければ命なし」という厳しい認識を持つべき。まずは自分の命を守る「自助」、そして隣近所で助け合う「共助」。被害が広域にわたる南海トラフ地震で発災後すぐの「公助」への期待は薄い。いま一度「自分事」として、家庭での備蓄や避難行動の再確認などに取り組むことをお願いしたい。
