アメリカ大統領選のトランプ候補が選挙演説中に銃撃されて負傷。リンカーンやジョン・F・ケネディなど4人の大統領が暗殺されており、民主主義を脅かす暴力はアメリカの悪しき病といえる。その一方で、安倍元総理殺害、岸田総理襲撃と続く日本も決して他人事ではない。先の都知事選でも、過激なヤジや度を越した〝落選運動〟が一部で見られた。程度の差はあるが、正義を通すためには暴挙も辞さない、という考えには共感できない。
正義や正しさについて考える時『アンパンマン』を思い返す。作者のやなせたかしさんは戦争体験と弟の戦死から「正義は不安定で、ある日突然逆転する」「逆転しない正義は愛と献身だ」「困っている人のために愛と勇気をふるって、ただ手を差し伸べるということなのだ」と語っており、この正しさを超える考えが想像できない。
自らを振り返っても、特に政治的な議論は感情的になりやすいところだが、よりよい社会を築くのが政治の目的のはず。社会の構成員として、愛と献身の心は忘れずにいたい。
(R)