名古屋城天守閣の木造復元計画の市民討論会で、電動かごの設置を求めた車いす利用者に、別の出席者から差別的な発言が浴びせられた。
史実通りの復元が唯一可能といわれる天守閣は観光の目玉とみられている。一方で多様性の重要性が増す社会の中で、観光施設のバリアフリー化は必要条件でもある。どちらの主張にも一理あり、だからこそ相容れない。それでも、話し合いを繰り返し、妥協点を見いだすことこそが、人類が培ってきた知恵である。
LGBTや国際化など、社会の変革が早い現在だからこそ発生しやすい事例。本紙地域の議会や住民説明会でも、議論が加熱することはある。活発な議論は地域活性化に不可欠だが、異なる意見でも互いを尊重することが大前提となる。発言は自由が大原則だが、何を言っても許される訳でもない。
今回の件は、主催者の名古屋市が差別的な部分の撤回を求めるべきであったが、果たしてこの地域で発生した場合適切に対処できるかどうか。自身を含めて、他山の石とすべきである。
(R)