輪内買い物支援サービス「いこらい」の古江地区を対象とした実証実験が始まった。輪内地区は商店や飲食店が少なく、買い物支援サービスは喫緊の課題であり、積極的な充実が必要だと考えてきたが、話を聞いてみると、そんな単純な問題でもない。
そもそも買い物ができなければ日常生活がたちまち困窮する。地域の商店や移動スーパー、住民の乗り合いや買い出しなどが機能しており、これに多分に影響を与える施策は本末転倒になりかねない。
平成26年の経済産業省の報告書によると、日本全国の買い物弱者は約700万人いて増加傾向にある。アクセス可能な店舗の不在の農村・山間部が問題なのは想定内だったが、中心街の衰退による地方都市やベッドタウンの深刻度が高いと指摘している。移動手段に乏しい高齢者が郊外の大型店舗にアクセスすることが困難なのは道理であり、これは尾鷲市の旧町内でも同じことが発生し得る。
報告書が、買い物弱者の問題の一つに「生きがいの喪失」を挙げているのは興味深いし、納得できるものがある。高齢化が進む中、官民が連携した柔軟な体制を構築することが、ずっと住めるまちづくりの一助となる。
(R)