長年尾鷲の経済を支えていた中電尾鷲三田火力発電所の跡地を活用した〝おわせSEAモデル〟。釣り桟橋、バイオマス発電、グランピングと画餅もあったが、市長選を前に、バナメイエビの陸上養殖計画、条件付きで大型製材工場も進出の意向が明らかになった。
この2つの事業が実現すれば効果は大きい。海産物の名物が増えれば「海のまち」としての尾鷲の強みが増し、外貨獲得やふるさと納税の増加が期待できる。
カーボンニュートラルとJクレジット、山林と林業の維持のためにも、「木のまち」のシンボルになり得る大型製材工場の誘致はなんとしても成功させたいが、前提条件の「新しい製材方法の確立」「年間10万立方メートルの原木の確保」はできるかどうか。
尾鷲市出身の作家、伊吹有喜さんが連載中の『灯りの島』は尾鷲の戦前戦後を舞台とした物語だが、この〝灯り〟とは尾鷲に繁栄をもたらした火力発電所のことだとすると、今の尾鷲は灯りを失った状態にある。可能性をつかんだのなら、決して手放してはならない。
(R)