人生で一番うまかったのが、早田の船上神楽を終え、船内でふるまってもらった刺し身。2月の冬の海の上で、コーラ片手に凍えながら食べた。鮮度は最上級で、極上のうまさだった。
これは例外としても、移住してきた身としては、尾鷲の魚のおいしさは格が違う。生臭さがなく、うまみが段違いで、感動したものだ。マグロ船が尾鷲港に帰ってきた地元スーパーは特に狙い時で、あんなに大きな切り身が格安で手に入るので、大きめに切ってかぶりつくと、割と手軽に幸せになれる。体重が増えた原因の一つは、海鮮丼と漬け丼だろう。
子どもたちに尾鷲の魅力を問う企画は多く、「魚がうまい」という回答はよく聞くが、都会の安い居酒屋の刺し身を食べなければ、相対的な価値はまだ理解し得ない。この地域で生まれ育った子が、故郷以上の魚食に出会うことは難しく、ある意味で幸い中の不幸といえよう。
花より団子とはいうが、花も食も楽しめるのが春のよいところ。現在売り出し中の春ブリと尾鷲甘夏も春の味覚である。
(R)