尾鷲市中央公民館の1階にある郷土資料室で、古典籍に関する企画展が行われている。市が所蔵する600点以上の中から、学芸員の脇田大輔さんが興味深いと思われる約50点を紹介・解説している。
和綴じの本の現物を見る機会はめったにない。博物館などの展示品か大学の研究室にあるものか、という印象。本の内容だけを知りたいなら、書店に行けば多くの古典の活字本があるし、ネットで検索すれば高解像度で撮影したデータも出てくる。
何かで読んだが、墨は丈夫で長持ちするらしい。数百年たっても字が消えずに残っているのは何よりの証拠。一方で、尾鷲では度重なる地震・津波で本という物自体が逸失してしまっている。貴重な記録が残っていないのは残念なこと。
展示されているものは、徒然草や枕草子などおなじみの文学作品や、津市出身の谷川士清(ことすが)が編さんした国語辞書・和訓栞(わくのしおり)といった地域に関係したもの、葛飾北斎が挿絵を描いている本など多彩。それほど大がかりな展示ではないものの、担当者の熱意が感じられる。5月30日まで行われているので、中央公民館に行った時にのぞいてみてはどうか。
(M)