新型コロナウイルスのワクチン接種に関して、国は2月下旬までに接種を開始する方針を示した。全国民が無料で受けられるよう昨年12月、予防接種法を改正しているが、急務となるのが接種体制の整備だ。
ワクチン接種は強制ではなく個人の自由だが、自分の命を守るためにできる限り接種するよう求める、いわば努力義務。2回の接種が必要という。新宮市によると、保健所(県)が担当する、医療従事者と消防救急関係者の接種を3月中旬ごろまでに完了させ、感染すると重症化するリスクが高い高齢者(65歳以上)については、3月下旬以降に行う。
各自治体では、ワクチン接種が円滑に実施できるよう、医療関係機関との調整や接種会場の確保、住民への周知や案内、相談体制の整備などに取り組んでいくが、大切なのは、接種したい人が接種できないということにならないよう、環境整備に努めること。65歳以上の高齢者となれば移動手段に限られた人は多い。接種場所まで車や近所の人と乗り合わせで行ける人はいいが、外出するのもままならない人はどうすればよいのか。
特に山間部で集落が点在している地域への対応。自宅まで往診というのは医療従事者の負担を考えると現実的ではないが、自治体が最寄りの接種場所までマイクロバスなどで送迎することは十分可能。那智勝浦町などは現在運行している町民バスを利用できるのではないか。
「高齢者の命を守る」という意識をしっかりと持って、交通弱者でも安心して接種できる体制を整備することが自治体の責務になる。
新宮市は保健センターに職員5人体制の「ワクチン接種推進室」、那智勝浦町は副町長を統括責任者とする12人体制の「ワクチン接種対策室」を設置。接種したいという住民目線でさまざまなことを想定しながら検討し、情報周知の際には、広報紙や公式ホームページだけでなく、報道機関なども通して広く行き渡るようにしてほしい。
一方、ワクチンは承認手続きや接種開始が予定通り進んだとしても、一般に供給されるのは5月ごろになる見通し。昨年末からの感染拡大で各地の医療体制はひっ迫しており、ワクチン接種にめどが立ったことで気持ちが緩むと危うい。マスク着用や手指消毒、3密を避けるなど基本的な感染防止対策を一人一人が確実に続けることが何より大切になる。