尾鷲総合病院の経営状態が急激に悪化している。令和7年度予算をみると、医業収支は収入33億6251万円に対して、支出(費用)は44億2744万円となっている。その他の収入を加味しても4億5804万円の赤字を見込む。市によると、新型コロナウイルス感染症時に減った患者が、特に内科の入院で、以前の状態に戻っていないという。
要因はどこにあるのか。特に松阪・伊勢方面への交通の便がよくなり、〝かかりつけ医〟が松阪・伊勢方面の病院になっている人もいる、という話も聞く。高齢化が進み、より高度な医療を必要とする人も増えていることも背景にあるかもしれない。立て直しは難しいかもしれないが、次の市長、市議の大きな仕事の一つである。
尾鷲だけの話ではなく、直近にある紀南病院も、令和6年度の赤字が約6億5000万円にのぼる見込み。公立病院は全国的に経営が厳しい。日本医師会と6つの病院団体の調査によると、昨年6月から11月までで、経常利益が赤字だった病院が6割以上あった。医薬品や包帯などの高騰に加え、人件費、光熱水費も上がっており、さらには病院食の外部委託費も増加しているという。一方で、収入の核となる診療報酬は抑制が続いている。
総務省は「民間病院の立地が困難なへき地等における医療や、救急・小児・周産期・災害・精神などの不採算・特殊部門に係る医療、民間病院では限界のある高度・先進医療の多くを公立病院が担っている」と指摘する。現状を放置すると、特に地方で、住民の命を守る仕組みが破綻してしまう。
医師の地域・診療科偏在も、問題がますます大きくなっている。「やりがい」を知ってもらうことなどで、これらの偏在解消に努力したり、各病院がDX活用などより合理的・効率的な運営をするのはもちろん、特定の病院・診療科の患者だけでなく、全国民に薄く・広く、公立病院を支えてもらう仕組みが必要だ。