新宮市は今年10月、合併20周年を迎える。2025年度一般会計当初予算に市制施行・合併20周年記念で実施する文化芸術鑑賞事業関係の予算を計上した。市議会が3月定例会でこれを審議。教育民生委員会は内容が未成熟のまま予算計上されていることを問題視し、イベント自体の精査、議会への報告など慎重な対応を求める付帯決議を提出したうえでの承認となった。
これは一例に過ぎない。田岡市政の政策はこれまでも未成熟だったり、場当たり的だったりするものが目立つ。市長は就任以来一貫して「市政は市民のためにあり」を基本理念に、新年度予算大綱説明でも「市民の誰もが元気で心豊かに暮らせるまちが展開できるよう取り組む」と表明した。現在4期目の“長期政権”だが、市民の満足度はどれほどだろうか。
人口減少、とりわけ出生数の減少に危機感を募らせているのか疑問。2024年度の出生数が100人を割ったというのは大きなニュースだ。6年後には小学校に入学する児童が100人未満。単純に見ると、規模の大きな神倉、王子ヶ浜、三輪崎それぞれ1クラスずつになる。事態に直面してから統合の話が出てくるのか。現在、緑丘中と城南中が2027年度の統合に向けた準備を進めているが、旧市内の小学校を一体的に考えることも選択肢の一つだったのでは。
政府が先日発表した南海トラフ巨大地震の新たな被害想定について、和歌山県は前回から死者数想定が1.5万人減少したことに、過去10年間で津波避難タワー建設や津波避難ビルの指定などの避難対策が進んだことも要因の一つにあると見解を示した。本紙エリアの沿岸自治体を見ると、津波避難タワーがないのは新宮市のみ。遠くへ逃げられる人ばかりではない。地区にタワーがあれば日頃からの防災意識向上にもつながる。沿岸地区からの要望を受けながらも、前向きな返答は見られない。
また、市長は観光に力を入れると年頭に話していたが、高田グリーンランドの入浴施設老朽化の件でも対応が後手。施設では繁忙期への対応が間に合わず、観光客や合宿等での宿泊者に大きな影響を与えている。このような課題に対して一つ一つ精査し、対処療法ではなく先を見据えた市政運営を求めたい。