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社説「鉄道維持へ自治体の覚悟必要」

 JR紀勢本線の阿田和駅で14日朝、列車の停止・走行に関する信号機に不具合が発生した件は、通学時間帯に重なったことから、紀宝町や御浜町などの高校生ら200人以上が足止めとなった。改めて、この地域で列車の果たす役割の大きさを認識する出来事でもあった。

 当地方のきのくに線(JR西日本)・紀勢本線(JR東海)ともに、観光客だけでなく沿線住民にとって欠かすことのできない交通手段。しかし、人口減少や公共施設の郊外化、車社会の発展により鉄道利用客は激減しており、今後も顕著と思われる。いわゆる赤字路線と位置付けられて久しく、運行本数の減少など縮小傾向にある。JR西日本は、今すぐに路線存廃の議論をするわけではないとしたうえで、白浜~新宮間の赤字が危機水域にあることを公表し、同区間の利用促進や将来的なあり方について、沿線自治体などとつくる協議会で話し合いを続けている。
 
 ローカル線の存続はJR任せではなく、地域が主体的に関わる時代ではないか。単に「残してほしい」と陳情するだけではなく、どのように持続可能な交通体系にしていくのかを考え、具体策を講じることが求められる。
 
 名古屋鉄道(名鉄)で存廃が議論されていた「西尾・蒲郡線(通称・にしがま線)」では、一部区間の運行にかかる費用の一部を沿線自治体(西尾市と蒲郡市)が負担する「みなし上下分離方式」を2027年度から採用することで存続が決まった。この方式は鉄道会社が設備を所有したまま、維持・管理の経費を自治体が負担する方式。自治体の財政負担は増加するが、市が発展していくために必要不可欠なまちづくりのための投資(西尾市長)としている。また、滋賀県では地方公共交通を存続させるために全国初となる「交通税」導入の検討が進められている。
 
 存廃の議論が出れば、沿線自治体は存続のために膨大な財政負担しか選択肢はない。今のうちに“自分事”に捉える必要がある。JRと協議して、列車をまちの広告塔に使うことも一つ。御浜町なら年中ミカンのとれる町、熊野市なら大花火大会、那智勝浦町はマグロ、太地町はクジラなど、それぞれのまちを象徴する写真やイラストを車体へラッピングしたり、車内刷り広告を利用したりするのはどうか。無人駅舎に工夫を凝らして情報発信基地にしても話題作りになる。
 
 各自治体の当局と議会が知恵を出して議論し、まちづくりの一環として本気と覚悟をもって取り組んでもらいたい。
 

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