各自治体で3月議会が行われている。4月から始まる新年度に行う事業とそれに伴う予算を認めるかどうか、各議員は当局から配布された分厚い予算書を基に、本会議や常任委員会で当局に質問しながら慎重審議している。
どの自治体も財政状況は厳しい中だが、新宮市、那智勝浦町、紀宝町、熊野市では一般会計当初予算の規模が過去最大となった。新宮市は前年度から力を入れている子育て支援をさらに補填的な事業も展開して継続しながら、空き家対策や人口減少対策、防災・減災対策などバラエティに富んだ内容で、新規事業も多いとしている。那智勝浦町も喫緊の課題とする防災・減災対策、子ども・子育て支援に重点を置いた予算編成。紀宝町も同様で、災害に強い安全安心なまちづくりに努めたいとする。同規模の市の平均と比べて20億円以上多い超大型予算とした熊野市は、非常に厳しい経済状況下、市内で一番大きな組織の市役所が予算面でも総規模を大きくして経済の下支えをしたいという思いで組んだと説明する。
何が無駄で何が必要か、それぞれの自治体で特性があり答えは一つではないが、統一して言えるのは「住民のために使う」という観点を忘れないことだろう。各議員には、当局提案の“原案通り”ありきではなく、住民の視点に立って、場合によっては案を差し戻したり、修正をかけたりすることも必要ではないか。
物価高騰対策はどの自治体でも盛り込んでいるが、そこでは“差”が見られる。熊野市は市民1人5000円分の商品券配布にかかる予算を令和6年度の補正で計上した。6日に新年度予算案を発表した太地町は町制100周年記念と物価高騰対策で1人計1万円分の商品券を配布する。紀宝町は先月の臨時議会で8000円分の商品券を3000円で販売する「紀の宝プレミアム商品券」の発行を決定。新宮市はコロナ禍でも実施した40%のプレミアム付き商品券の発行を予定している。
食料品やガソリンの値上がりで各家庭の生活は苦しさが増している。貯金を切り崩してやりくりする家庭もある。各自治体にはこの状況をもっと緊迫感を持って捉えてほしい。一般家庭の貯金にあたる基金を充ててでも、目の前の住民生活の支援につながる施策を積極的に講じてもらいたい。