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社説「過去の教訓 今に生かす」

 「忘れたらあかん、忘れさせたらあかん」。紀伊半島大水害(2011年9月)により、那智勝浦町内で犠牲となった人たちの遺族でつくる、「那智谷大水害遺族会」代表を務める岩渕三千生さんがよく話す言葉だ。

 同じ被害を二度と繰り返さないため、この出来事を後世に教訓として語り継いでいくことが不可欠との思いで活動を続けている。大水害の発生時刻に合わせて毎年営んでいる追悼供養もその一つ。今年は新型コロナウイルスの関係で人が集まる催しは中止になるものが多く、町主催の慰霊祭も町長と遺族代表による献花のみとなったことから、遺族会の供養も開催の有無を検討。しかし、行事を続けることが何より防災意識を高めてもらうメッセージになるとの思いが強く、時間短縮での開催を決定した。
 
 参列者の中には大水害当時の町長で、自身も妻と長女を亡くした寺本眞一さんの姿があった。寺本さんは「何もできなかったことが悔やむ」と当時の状況に思いを巡らせた。上流にダムのある太田川の水位を気にする一方、那智川に対する意識が薄く、事前の対応ができなかったことを悔やんでいるという。
 
 新宮市消防本部では、大水害で殉職した団員2人を追悼する「消防安全誓いの日」を毎年開いているが、大水害を経験していない消防職員は19人で全体の35%を占めるようになった。新宮市立緑丘中学校は毎年、大水害に併せて防災集会を開き、生徒の防災意識を高めている。
 
 時間が経過すれば人々の記憶は薄れる。新宮市の災害史誌を発行し、減災カフェを主宰する上野山巳喜彦さんは、過去に経験した災害に学び、現在を点検し、未来に備えることが大切と訴える。そのような流れを作るためには、節目の行事を継続する必要がある。
 
 台風10号が日本列島に接近中。予報では九州付近に接近、上陸の可能性が示されているが、台風から離れていても豪雨や暴風になることは考えられる。昨今の気象はかつてのものさしで測れないものとなっており、最新情報を踏まえて早め早めの対応が大切になっている。9月は防災月間でもある。「自分の身は自分で守る」を念頭に、災害への備えを考える機会にしてもらいたい。
 

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