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社説「堅調な財政 今こそ出動を」

 開会中の新宮市議会6月定例会の一般質問で、一部議員から財政ひっ迫を危惧する声が上がったが、当局は健全に運営されていると答弁した。市の財政状況を見ると、2024(令和6)年度決算の実質収支比率は15.3%で、全国792ある市の中で16位とかなり高い。実質収支比率とは、地方自治体の財政規模に対する収支の割合を示す指標で、一般的に3~5%が適正な範囲。この比率が高いほど、財政の健全性が示されている。単年度収支が堅調なだけでなく、一般家庭の貯金にあたる基金も25年度末の残高見込みで106億円あまりまで積み上がった。使途を定めた特定基金を除き、市民サービスなどの一般財源に使える財政調整基金は31億2000万円ある。

 一般質問では、3月定例会で承認を受け実施された、新成人への30万円支給事業を挙げ、今後の財源確保への不安や事業効果に疑問が残るとして、制度の見直しを求める声があった。小中学校入学時の5万円支給も含め、子育て世帯に特化した支援策に一部市民から不満や反発の声があるのも事実だが、いったん始めた施策をたった1年でやめるとなれば、次回支援を受ける予定の市民はどう思うか。決まったことに反対するのではなく、子育て世帯以外の市民へのサービスを取りこぼさない施策実現を目指すべきではないか。その財源があることは明白。長引く物価高騰は市民の家計を直撃し、特に高齢者は年金収入が固定されているため、影響を最も強く受けている。今定例会では高齢者への商品券配布を提案する議員も何人かいた。待望する市民は多い。
 
 基金に関しては、前市政時代から「南海トラフ地震の復旧・復興のために」と、取り崩すことなく積み上げてきた。しかし、東日本大震災の被災地復興には、国民からの「復興税」が充てられている。その点も踏まえれば、貯蓄も大切だが、守る命を増やすための施策をもっと進めるべきだ。その一つが沿岸部への津波避難タワーの建設。市はこれまで一貫して、できるだけ遠くに逃げる「水平避難」を推奨しているが、高齢者、障がい者、移動手段の限られた住民に遠くへ逃げろと言っても難しい。避難タワー建設は自治会からの要望も繰り返し出ている中、何よりもスピード感をもって取り組む必要がある。資材高騰が続き、遅れれば遅れるほど事業費は高くなる。
 
 今定例会では、新宮市がこれまで堅実な財政運営を行ってきた成果の一端が見えた。しかし、現状ではその成果が市民の暮らしに十分還元されているとは言い難く、財政が健全なことを「何もしない理由」にしてはならない。むしろ、余力のある今こそ、必要な支援を先送りせず、市民の生活と命を守るために積極的に使うべきではないか。市当局、議会ともに知恵を絞り、9月定例会では、支援の行き届かなかった人たちへの支援策を議論し、実行に移してもらいたい。
 

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