熊野速玉大社は令和10年の御創健1900年に向け、国宝御神像の複製に崇敬者と篤志家の協力で取り組んでいるが、これに併せて、子どもたちが彩色テスト用の像の制作に携わり、その完成品が披露された。和歌山県立博物館施設活性化事業実行委員会が国の補助を受けて取り組んだもの。
国宝の御神像は普段、県立博物館の収蔵庫に安置されており見ることができない(1月19日まで特別展で公開中)。立派なもの、大切なものとは分かっても、”地域の宝”として身近に感じる人はどれほどいるだろう。今回、複製に携わった子どもたちは大変貴重な経験をした。県立博物館の学芸員も全国的にも珍しい取り組みで、地元住民がかかわったことに大きな意味があるとした。
平安時代に作られ1000年以上も現存に近いまま守られてきた。上野顯宮司も「奇跡」と称すが、これを今後も守り伝えていくためには、文化財を守るという地域住民の意識が大切と話す。子どもたちの中には複製の大変さを実感したうえで、将来は文化財に携わる仕事を目指したいという言葉が聞かれ、頼もしく感じた。
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