進出企業が尾鷲市と基本協定
中部電力尾鷲三田火力発電所跡地を活用する「おわせSEAモデル」の活性化プロジェクトの一環で、バナメイエビの大規模陸上養殖場が建設される。事業進出を決めた企業が28日、尾鷲市と基本協定を結び、計画を明らかにした。来年夏の稼働を予定し、翌2027年には国内最大級の生産を目指す。
市と協定を結んだのは、韓国に本社を置く水産養殖会社が昨年11月に設立した日本法人のADジャパン(東京都港区)。親会社のアクアデベロップメントは起業してまだ6年で、陸上養殖場は韓国だけにしかないが、サウジアラビア、UAE、ベルギーなど5か国で建設に向けたプロジェクトが進んでいる。
国内初となる尾鷲市の建設予定地は矢浜の第1燃料ヤード。中電と交渉を進めている借地契約がまとまれば、来年1月に着工。約11億円を投資して工場を建設し、年間100トンの生産から始める。2年目には200トンを想定し、バナメイエビの陸上養殖では国内最大級となる。
稼働5~6年後にさらに約22億円を投じて拡張し、最終的に11.3ヘクタールの広さがある同ヤード全体を養殖場に活用。600トンまで生産能力を高める計画で、アジア最大規模を目指す。従業員数は事業開始時が約10人、規模拡大の最大時で約30人を見込む。
同社独自の閉鎖循環式陸上養殖を活用する。稚エビから育て、出荷するまで水交換の必要がなく、藻類やバクテリアの自然の力を生かし、環境への負荷を極力抑える。パイプラインで海水を引き込み、最高品質のオーガニック(有機)エビを生産する。出荷サイズは需要が高い体長15センチ、重さ30グラム超。稚エビから4~5か月かけて育てる。
広大な土地の確保が可能で、首都圏、中京圏、関西圏という日本の大消費地に近いという2つの条件に加え、SEAモデル協議会関係者の熱心な誘致活動が尾鷲に進出する決め手になったという。
協定締結式に臨んだADジャパンの奥村朋子代表取締役は「初めて日本で事業を行う上で地元の歓迎をいただけることは心強く思っている。事業を通じて、尾鷲市の皆さまとともに地域社会の発展に貢献できるよう積極的に取り組んでいく」と意欲を示した。
また、加藤千速市長は「本市に進出の意向を固めていただいたことに心より御礼申し上げる。おわせSEAモデル構想実現のための新たな第一歩になると大いに期待している」とあいさつし、将来的には市民の教育や集客などにもつながっていく波及効果を期待した。
世界で最も食されているバナメイエビ。日本は世界有数の消費国だが、ほぼ輸入に頼っている。同社は今後、国内でも尾鷲市以外に複数の生産拠点を設け、国内産の安全なエビを広げ、消費国での地産地消を進めていくという。