久しぶりにコンロの油汚れを掃除した。重曹水をたらしてしばらく放置した後、コンロを磨く作業だけで恥ずかしながら1時間半を要した。しかし、つるつるに生まれ変わったコンロを見ると、それだけで気分が上がる。鍋やフライパンを火にかけるという機能は変わらないのに、なぜだかいつも以上にコンロが好きになる。手入れの魔法である。
「エントロピー増大則」という法則がある。元々は熱力学の用語で、「エントロピー」とは無秩序な状態の度合い、すなわち乱雑さを表す概念。物事を放っておくと、エントロピーは自然に増大するのだという。
こまめな手入れが大切なのだろう。人間関係でも、あいさつや約束、礼儀、少しの気遣いなどの「しなければならないこと」を“手入れ”だと思えば、説明がつく。そして忘れてはいけないのは、手入れをすればするほど、人はそれをより大事に思うということ。大事に思っているから手入れをするし、手入れをするからより大事になる。
夫婦間ではたいてい、旦那さんが奥さんのエントロピーを増大させないため苦労している場合が多いように見受ける。
【稜】