「世界は誰かの仕事でできている」—。缶コーヒーでお馴染みの某社のキャッチコピーが、大切なことを教えてくれる。
2月6日のお燈祭りに向けて、神倉神社の石段検分が行われた。参加したのは熊野速玉大社、神倉青年団、神倉神社奉賛会、新宮市観光協会。神事に向けて、あの急峻な石段にズレや浮きがないか、くまなくチェックしていった。お燈祭りは荒々しい火祭りとして人を魅了するが、その裏で安全確保のために心を尽くす人たちがいるということが、今回の取材の発見だった。
あのキャッチコピーを私が初めて意識したのは、肉体労働をしていた2020年。マンホールの中でひたすら洗浄機を壁に当て続ける仕事や登山道の階段を修繕するため木材をふもとから担ぎ上げる仕事など、多くの体験をした。その際、自分が何気なく生活している裏にその「当たり前」を支えてくれている人たちがいるのだと学んだ。
同様に、お燈祭りの当たり前を支える人たちがいる。今年も昨年に続き上り子の不参加が決まっているが、石段検分者の口からは、「来年こそは」という願いが聞こえてきた。祭りは、誰かの祈りでできているのかもしれない。
【稜】