新宮市役所から会社への道を歩いていると、ふと道路沿いの木にクモが巣を張っているのを見つけた。細かい網目でできた見事な巣で、小屋のようにいくつかの面を組み合わせた立体状になっていた。中にはもちろん、巣の主が鎮座している。
世界にはなんと4万種のクモがいるらしい。うち日本にいるのは1200種ほどで、巣を作るのはその約半数だという。クモが腹部に異なった役割を持つ7種類の錦糸腺を持っており、目的に応じた機能を果たしているというのも驚きだ。
クモの巣では、そんな糸の役割分担が見られる。中心部は糸をやや密に張った居住スペースで、中心部から外へ放射状に延びている糸は、巣の骨格を形成する丈夫な「縦糸」、渦巻き状の伸びやすく粘着性の高い糸は獲物を捕獲する「横糸」と呼ばれる。また巣を囲む「枠糸」、枠糸と木をつなぐ「けい留糸」、クモの緊急時の命綱になる「牽引糸」など、クモは実に見事に使い分けているらしい。
神秘的なクモの巣は、日の光でキラキラと輝いていた。少し意識を自然に向ければ、美しいものは生活のすぐそばにあるとわかる。
【稜】