「命こそ一番の宝。このことを胸に刻んで、明るい未来を創っていきます」—。矢渕中学校の3年生が文化祭で披露した学年発表が素晴らしかった。
沖縄県での平和学習から、沖縄戦で三重県出身の兵を看護した「梯梧(でいご)学徒隊」の体験談をもとに劇を作り上げた。15歳の少女たちが水のしたたる薄暗い壕(ごう)で、いつ死ぬかもわからないぎりぎりの状況、寝食もままならない中、負傷兵を手当てしたという悲惨な戦争体験を誠実に演じていた。
沖縄県の南部、糸満市の平和記念公園に行ったことがある。並ぶ無数の石碑に刻まれた戦没者の氏名を前に、正直、何を思えばいいかわからなかった。”尊い犠牲”の上に今があるなら、今の世界は彼らの望んだような姿なのだろうか。その中にいる私は、何にどこまで責任を負えばよいのか。責任を負いたがっていること自体、傲慢な自己満足ではないのか。言葉が水泡のように浮かび、また消えていった。
「ぬちどぅたから」は、「命こそ宝」という意味の沖縄の言葉。正しさよりも大切なことがある。中学生のまっすぐな言葉が身に染みる。
【稜】