少子高齢化と過疎化の波が押し寄せる中、全国の地方自治体にとって祭事や伝統芸能の維持は、避けては通れない深刻な課題となっている。担い手不足を理由に、歴史の灯が消えていく現状は、地域のアイデンティティーそのものの喪失を意味する。
豊漁と海上安全を祈る早田町の船上神楽を取材した。およそ20年ぶりだった記者の心に一筋の希望をともしてくれた。伝統を壊すのは一瞬だが、続けるのは簡単ではない。
定年を機に故郷へUターンした男性が子ども時代に経験した神楽舞を引き継ぎ、また別の男性が笛の技術を習得し、長い伝統を閉ざさず守る。地域の文化を次世代へとつながなくてはならないという責任ある覚悟の表れである。
漁業の恵みと共に生きる小さな集落。「だから神仏の行事や習わしを大切にする」と区長は話した。海への感謝と畏敬の念が漁村に息づいている証拠だ。
加えて、若い世代の移住者が定着し、地元住民と共生している早田。新しい風も吹き込み、「まだまだ捨てたもんじゃない」と希望を感じさせる。
(N)
