紀勢本線の尾鷲—九鬼間開通の68年前のニュース映像の上映会では、先にモノクロ版を流してから、カラー化した映像を写すと、「お父さんだ」と声が上がっていた。まるで記憶にも色がついていくように、「父にまた会えた」と感激する住民の姿に、企画した地域おこし協力隊員は「やってよかった」と大きく息をついた。
この企画は元々、春ブリのPRのために昔の九鬼のまちなみの映像を探していたことがきっかけ。「昔にぎやかだったという九鬼のまちなみを見たいとずっと思っていた。これで、まちの皆さんとやっとその共感が持てた」の言葉に、初めて旬のコツまみバルを取材した時を思い出した。
このまちの過去に、人があふれたという商店街やにぎわう飲み屋街は〝こうだったのだろう〟という景色を見た時の感動は今も覚えている。なぜ感動したのか、それはやっぱり、にぎやかな尾鷲が見たかったのだろう。少子高齢化と過疎化が進む中、再びにぎやかなまちに、というのは見果てぬ夢で、あきらめられない願いでもある。
(R)
