のど元を過ぎた話だが、コロナ禍の頃は本当に良いニュースがなかった。取材の予定もなくなり、紙面のあてもなく、自分と世界に不安がなかったと言えば嘘になる。そんな中、彗星のように活躍した湯浅京己投手はまさに希望の光だった。尾鷲のスターで、私にとってのヒーローである。
国民的スーパースターの長嶋茂雄氏の活躍や実績は語るまでもない。戦後の苦しみを乗り越え、経済発展を遂げていく日本にはヒーローが必要で、人々の希望を受け止めきる器を持っていた。勝負強い打撃と華麗な守備で熱狂を生み、天真らんまんな人柄でひきつけていく、人々に夢と希望を与え続けた一生だった。
今年は尾鷲市出身の3選手の成績に一喜一憂しているが、もし長嶋氏がいなかったら、果たして今のプロ野球があったか。プロ野球は数々のドラマを生み、大谷翔平選手をはじめメジャーで活躍する選手も次々と現れているが、今の繁栄は先人の努力と熱意の積み重ねの上にある。本当に、一つの時代が終わってしまった。
(R)