閉校式に約100人
令和6年度で147年の歴史に幕を閉じる紀北町立矢口小学校の閉校式が3月30日に営まれた。全校児童12人や保護者、卒業生、住民、来賓など約100人が出席。春のうららかな日に、子どもたちと地域を支えてきた学校との別れを惜しんだ。
明治10(1877)年に創立した同校は、1950年代には180人ほどの児童が通っていた。少子化の波にさらされ、近隣の白浦小や島勝小との統合を経て閉校となった。
藪中一浩校長は「朝夕必ずあいさつしてくれて、校長室に『ギター弾いて』と遊びにくる子どもたちに、心が癒やされてきた。人生の一時期をこの矢口小で一緒に過ごしたことを誇りにして、それぞれの道を歩いてほしい」とあいさつした。
児童12人が法被を着て南中ソーランを踊ったほか、『威風堂々』の合奏、『絆(きずな)』を合唱した。子どもたちは学校の思い出を一つずつ発表。「矢口小で学んだことを心に刻んで、新たな絆をつむいでいきます」「ありがとうございました」と締めくくった。
中井克佳教育長は「矢口小は小規模だったが、地域に愛され、すばらしい人材を輩出し続け、常に輝き続ける学校だった」と、尾上壽一町長は「この学校で培われた貴重な経験や思い出は胸に深く刻みつけられ、次代を担う子どもたちの心に確実に受け継がれていくと信じている」とあいさつした。
来賓の鈴木英敬衆議院議員は、矢口小創立100周年記念の冊子を読んだことに触れ、児童に「歴史や思い出は、学びや気づきとして次につながっていく。この147年の歴史で築いてきた思いや学びを、これからもみんなでつむいでいってほしい」と呼び掛け、「国会議員として、この子たちの教育格差を生まない環境づくりのために尽力していく」と述べた。
児童による先生や校務員、スクールガードに感謝を伝えるサプライズ企画もあり、花束とバルーンアート、色紙を手渡した。
6年度は6年生がおらず最年長の5年生の一人として最後の一年間学校を引っ張ってきた浦永絆愛さんは「この一年間、みんなと仲を深められてうれしかった。最後のさよなら運動会が一番の思い出。違う学校に行ってもみんなと仲良くしたい」と話した。
矢口浦の井土和久自治会長は「学校がなくなれば地域から子どもの声が消え、まちが寂れていくと言うが、そうならないようしなければ。この子どもたちが帰ってこれるような環境づくりが必要になる」と語った。
17年間同校の校務員として働き、学校とともに退職する塩﨑真奈美さんは「矢口小は私の母校でもあり、なくなるのはやっぱりさみしい。子どもたちに支えられて本当に楽しい思い出でいっぱい。この子たちがこれからも幸せでいてくれれば」と涙ながらに語った。