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社説「祭り継承 柔軟発想を」

 各地でえびす祭りがにぎわいを見せたと思えば、那智川筋では春を告げる祭りが上流部から始まった。2月に入れば、花の窟神社の春季例大祭、さらに「お燈祭り」が控える。地区の神社を中心とした祭りの開催時期は春と秋に大別されるが、どの祭りもそれぞれの歴史があり、携わる人たちは誇りをもっている。

 郷土芸能を守る保存会組織が各地にあるが、60歳代以上が常に現役という組織も少なくない。一昔前なら地区の祭りに参加するのが当たり前だった風習が諸事情でなくなりつつある。参加したり、見物したりしないことには祭りの魅力を感じることはできない。

 一方で、参加したくてもできない事情もある。教育環境の変化がその一つ。学校週5日制の導入により学校全体にゆとりがなくなった。以前は、地区の祭り当日は午後から休校という学校もあったが、今はこうした取り組みは聞かない。

 祭典運営側の歩み寄りも必要。例大祭は毎年同じ日程というのが通例ではあるが、本殿での神事のみ行い、大勢の参加が求められる神輿渡御などは直近の日曜日や祝日に行うところが出てきた。新宮市の三輪崎八幡神社は9月15日が平日になった年は、神輿渡御を別日としている。また、長野県のとある神社は例大祭日程を○月の第○土日曜としたことでにぎわいを取り戻したという。

 そんな中、昨年暮れに開かれた、熊野速玉大社例大祭「御船祭」の参加者やOBらによる慰労会の席上、見物客の減少と後継者育成の難しさについての声があり、早船競漕を休日に移動させることができれば課題解決につながるのではとの提案も出た。「お燈祭り」は安全面を考慮すると現在の人数(約2000人)が適正といえ、日程を変更してまで観光客を呼び込む必要性はない。国指定重要無形民俗文化財にも指定される同大社の例大祭日程を変更するのは容易ではないが、古きよきものを受け継ぎながら、新しい手法も取り入れて挑戦していく姿勢も必要ではないか。また、郷土学習を大切にする観点で言えば、生きた教材となる祭りこそ、教育現場から積極的な参加を促してもいいはずだ。国の重文を教育にも生かすという発想もできる。

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