「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録20周年を記念したイベントが今週末、各地で開かれる。和歌山、三重、奈良の3県や各市町村で登録日(7月7日)に合わせて企画したものが多い。イベントを通して地元住民の世界遺産に対する意識が高まり、訪れた観光客にも満足して帰ってもらえれば幸い。
世界遺産登録から20年、当地方は国内外から多くの観光客を迎え入れ、地域経済が潤うなど恩恵を受けてきた。「世界遺産」という冠のおかげで他の観光地より優位性を保てたのは事実。一方で、当地方の世界遺産は国内で12番目に登録されたが、20年経過した現在、国内には25件の世界遺産がある。こうした競合地に勝り、安定的に観光客を呼び込むためには、ニーズに応じた観光商品の開発と同時に、おもてなしの大切さは不変だ。
各自治体は20周年にあたり趣向を凝らしたイベントを企画したが、迎え入れる環境は整っていただろうか。本紙5日付で報じた、新宮市の玄関口である国道42号、速玉大社前交差点の道路標識の文字が長い間薄れたままの状態であることは、おもてなしができていないと捉えられて仕方がない。
各所にある道路標識や案内看板は、それぞれ場所によって管理者は異なるが、最も身近な市町村が状態を確認したうえで、管理者に対して必要な修繕を求めるなどの体制を構築した方が良いのではないか。イベントばかりに集中し、こうしたおもてなしの部分がおろそかになっていた今回を教訓にしてもらいたい。
今後も地域の宝として、後世に守り伝えていくのは今を生きる我々の大切な役割。20周年を契機に、地域住民、特に子どもたちが地元に誇りを持てるような教育も求められる。機会を捉えた世界遺産学習はこれまでも各学校などで実施しているが、日常生活の中で何気に世界遺産に触れることができるような環境を考えてもよいのではないか。
例えば、まちなかの看板や標識の充実。各所への案内看板が少なく、以前から観光客に不親切と言われてきたが、小さな看板を要所に設置することで観光客だけでなく、子どもたちの目にもとまる。QRコードを付けてナビやガイド、クイズなどを盛り込んでもおもしろい。知恵を絞った取り組みに期待したい。