国道168号の檜杖橋で現在、塗替塗装工事が行われている。迂回路の旧道を走っていると、子どものころ熊野川町にある祖父母の家に行った時のことを思い出す。今より道が整備されておらず、とても遠かった印象。特に宮井大橋を渡ってから先は道幅が狭く、道路のすぐ下が崖になっていて大変怖かった。
祖父は炭鉱で働いていて、母が子どものころ町はたくさんの人で活気にあふれていたという。今では想像もつかないが、銭湯や映画館もあったらしい。林業も盛んで、川を使って筏で材木を下流に運んで生計を立てていた人も多かった。それが道路の発達に伴ってトラック輸送に取って代わられ、職を失った多くの人々は故郷を去って行った。便利さを手に入れた一方で、皮肉にもまちは衰退していってしまった。
山間部では、当時のにぎわいの名残で廃校が数多く残っている。最盛期には50人ほどの児童が在籍していたというから驚きだ。間もなくサクラの時季。子どもの姿はなくなっても、今年も廃校のサクラは満開の花を咲かせてくれるだろう。
【織】