「大蛇浦」。これで「おじゃうら」。うむ。なんじゃその読ませ方。地名は面白い。
地元の北海道はアイヌ語由来の地名が多く、「音威子府(おといねっぷ)」や「興部(おこっぺ)」、「馬主来(ぱしくる)」など、難読の域を超えている。
4年間住んだ沖縄もすごい。「北谷」で「ちゃたん」と読ませる剛腕ぶりだ。私が暮らしたのは「宜野湾市我如古(ぎのわんしがねこ)」。経の一節であろうか。「勢理客(じっちゃく)」は、人の苗字では「せりきゃく」となったりする。
地名には、土地の歴史背景や言語感覚、伝えるべき情報が見え隠れする。「熊野」の語源は諸説あるが、「隈(くま・すみ)」で奥まった地、地の果てを意味するという説があり、土地の隔絶性により独自に発展しながら守られてきた自然や精神性がうかがえる。
新宮市熊野川町の「日足」はよく水害で「浸る」から「ひたり」なのだと聞いたことがある。漢字から真逆にも思える。先の「おじゃうら」は、以前見た町行政の書類では「王子浦」となっていた。漢字を外し語感に耳を澄ませるのも、地名の楽しみ方の一つと心得る。
【稜】