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紀南抄「さびしさ」

 命とは、心細いものだ。荒野に刺さった一本の松明(たいまつ)の先に頼りなく揺れるともしびのようである。われわれは生きゆくのか、死にゆくのか。そのはざまで、意味や理由や意志や勇気を噛み締めふり絞り、ゆらぎ、たゆたう。

 人は円である。一人一人が丸い世界を持つ。他者との出会いにより円同士が重なり合って、世界は大きくなる。生まれた時はきれいな正円で、年齢と共にゆがんでいく。

 人の孤独は業が深い。谷川俊太郎は言った。「宇宙はひずんでいる それ故みんなはもとめ合う 宇宙はどんどん膨らんでいく それ故みんなは不安である」。何か不具合があってひずみが生じているのではなく、宇宙は元々ひずんでいるというのだ。人は元来不安を抱えた存在なのだ。あるいは不安自体が人を人たらしめている。

 寂しさはよいことなのだと言った人がある。いわく、最近はそれを紛らわせる手段が発達したから、"つながり"が薄れているのだと。思えば、人は夜を恐れ、昼を広げ、星を消した。そうかと思えば街の中で、自ら消した星をまた探すようになった。宇宙はひずんでいる。長く、ゆっくりと。

【稜】

      紀南紗

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