1年ぶりに、ギターの弦を交換した。古い弦を外し、ついでにかぶっていたほこりも拭き取る。1本1本、新しい弦を張り終えると、古ぼけたギターがまた輝いて見えた。
古い物でも、磨いたり洗ったり、手入れをしてあげるときれいになる。不思議と物が喜んでいるようにも見える。新品にはない味わいが加わり、一層愛着もわく。物との関係性・絆というのは、手入れによって少しずつできていくものなのだと思う。
ひょっとすると、人間との関係でも大事なのは手入れなのかもしれない。自分は大切に思っているつもりでも、行動や言葉にして表さなければ伝わらない。一回伝えるだけでもいけない。弦がいずれさびていくように、白い靴がまた汚れていくように、床にほこりが落ちていくように、何度も何度も、繰り返し手入れをしなければ、少しずつ関係性もくすんでいく。
交換した弦をポロンと弾いてみる。「ああ、君、そんな音を出す楽器だったんだね」と思い出した。ずっと押し入れの中に入れていたので、いつの間にかその詳細を忘れてしまっていたのだ。たまには親に連絡せねば。
【稜】