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紀南抄「来年こそは」

 科学が疑うことから始まるものなら、信仰は信じることから始まるものである。この二つは元々折り合いが悪い。科学は人間性(=意識)、信仰は自然(しぜん/じねん=無意識)と置き換えてもよい。科学の行き過ぎた日本で、熊野はまだそのバランスをなんとか保とうとする楔(くさび)の役目を担っているように感じる。

 今年は熊野三山の例大祭全てに取材という形で関わらせてもらうという得がたい経験をした。勝浦八幡神社や烏止野神社など地域の祭りも取材させていただいた。そこに集う人々の明朗快活な表情を見て、現代の”祭り”に象徴される「信仰」は、「科学」の休暇なのではないかと思った。信仰心に関わらず参加でき、社会的な立場、肩書き、背負った事情などは関係なく、ただ人がその光景や大きな存在に思いを寄せる。論理や数字、目に見えるかどうかすら意味を持たない。

 来年の干支は「卯(う)」。ウサギは飛躍、あるいは多産から繁栄、円満の象徴でもあろうか。来年は熊野の信仰が、マスクに覆われてしまった息を脱兎の勢いで吹き返すような年であってほしい。もう3年目だがあえて述べる。「来年こそは」。

【稜】

      紀南紗

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