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紀南抄「文章表現の矛盾」

 文章を書く以上、伝わるように書く必要がある。それは書くことそのものが、他者への伝達を前提あるいは目的とした表現行為にほかならないからだ。例えば私以外世界に誰もおらず、今後も誰も現れないということがわかっている場合、私は即座にペンを放り出すだろう。文章は書き手がいなければ生まれないが、読み手がいなければ文章足りえないのである。

 しかし私は、この表現方法にある種の矛盾を抱えながら挑んでいる。というのも、「ひと目読んで全てがわかる文章なら、それは何も書いていないのと同じではないでしょうか」という風変わりな大学教授の一言を心底真に受けたのである。目的にもよるが、少なくとも自己表現としての文章において、ある程度の抽象性や矛盾、不可解をもってあえて未完成で完成させるのは、両腕を失われたミロのヴィーナスにも通ずる創造性への飛翔であるという理想論を、私は未だ是としているのである。具体と抽象の割合は考えなければいけないが。

 「伝える」という運命と「想像の余地を残す」というエゴ、さらに読み手の「受け取る」という主観によって、私の文は世界に輪郭を残す。

【稜】

      紀南紗

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