新聞の見出しの付け方は難しくて面白い。
当紙では、見出しの原案を記者が考える。9月1日付の紙面では、新宮市佐野の公設市場を管理する組合議会定例会の記事で、「糸口は観光の誘客か」の主見出しが採用された。これはコロナ禍や物価高騰などで市場の経済状況が落ち込む中、管理者の田岡実千年新宮市長が「観光の誘客などに努め、ひいては公設市場の取扱量増大にもつなげていきたい」とあいさつした内容に焦点を当てた。
本当は「糸口は」の前に「不況打開の」などと説明を入れたかったが、長くなってしまいインパクトが薄れることと、大げさな「不況」に代わる適当な言葉が見つからなかったことから説明を省いた。言葉を足して削る作業は俳句の「多作多捨」の考えにも通じると思う。
また、少しでも前向きなニュアンスにしたかった。ほかの見出し候補は「公設市場の状況を報告」「市場 厳しい状況続く」など。個人的に前者は説明的で味気なく、後者は後ろ向きな印象である。単に状況だけでなく、もう一歩先の可能性を示したかった。
見出しは読者の入り口であり、記者の最終目的地。言葉で人のゆく道を照らせたら。
【稜】