叙勲受章者の方は、「まさか自分が」と驚く人が多い。その反応が、その人の活動のどれほど地に足のついた、地道なものであったかを物語る。
記者としては、「印象深かった出来事は」などと取材で尋ね、記事にまとめたくなる。それはそれで受章者を知る良い切り口である。しかし一方で、功績として評価されたのはそういった目に付く部分以上に、その背景にある膨大で緻密で葛藤のあった、日々の習慣的な取り組みだったのではないかとも思う。
私は今回、秋の叙勲の取材で2人の方にお話をうかがった。元新宮市消防団副団長の上野さんは、「自分に勝つ」ということを若い時から徹底する、背筋のまっすぐな方だった。元那智勝浦町消防団副団長の竹原さんは周囲への感謝を常に口にし、穏やかな表情の中にするどい眼光をたたえた方であった。
実績の奥のどうしようもなく地味だったはずの歩みにも敬意を表したい。また叙勲に限らず、見えづらい部分に光を当てられる仕事をしたい。そこにこそ見るべき現実があるのではないか。受章者の方々が成してきたように、自分にももっとできることがあると信じ、日々の筆を進める。
【稜】