谷崎潤一郎は随筆『陰翳礼讃』で影やほのかな光が生み出す日本文化の美しさと奥深さを論じている。正直飲み込みにくさを感じていたが、先日銚子川沿いで久しぶりにホタルを見て、これが陰翳礼讃か、と感じるものがあった。
真っ暗な道と、本当に見られるのかという不安が、おぼろげな光が浮かぶだけで晴れていく。光に囲まれた生活に慣れきっているからこそ、夜の森の闇と、虫の音と川のせせらぎと、体にまとわりつく温い風も、目をこらさなければ見えないほどのかすかな光の美しさと調和し、自然に溶け込んでいくような気さえする。
ホタルは美しさだけでなく、化学反応による冷光も科学的な好奇心の呼び水になる。特に子どもには一度でも見てほしい光景だが、ホタルは環境の変化や人工光の増加によって世界的に生息地を減らしており、この地域でも見られる場所は限られる。
闇と光が織りなす美しさはホタルだけでなく、花火や燈籠と特に夏の行事によく見られる。多くの人に楽しんでほしい。
(R)