慰霊祭や追悼式は厳粛に進み、式辞やあいさつも粛々と平和への決意が述べられることが多い。ただ、今年の紀北町の戦没者追悼式で、遺族会の会長が「父を返して」と言った声が、少し震えていた。
イスラエルとハマスが戦争状態となっているパレスチナの惨状が連日報道されている。パレスチナ問題は根深く、国家、民族、宗教、経済など人間の存在意義の根幹に大きく関わる。迫害を受け続けた末イスラエルを建国したユダヤも、住んでいた土地を国連のパレスチナ分割決議で奪われたアラブも、先人の血が染みついている掛け替えのない、譲ることのできない土地に違いない。
血で血を洗う中東戦争の末、ようやく共存のために結ばれたオスロ合意による和平交渉は途絶え、憎悪が増幅していく現状は、地獄としか言いようがない。
戦後78年経った日本でも、「父を返して」というあの悲痛な言葉の通り、戦争の傷は深く残っている。パレスチナでは今、その傷が膨大に生み出され続けている。なんとかならないか、そう思うことしかできない。
(R)