尾鷲が最も美しいのは、雨上がりの晴天だと思う。激しい雨に洗い流された空気は澄みきり、雨粒に濡れたまちなみや山がきらきらと輝く。
18年ぶりのリーグ優勝を果たした阪神タイガースの歓喜の輪の中に、背番号65、湯浅京己投手がいた。チームの柱として大きく期待されたものの、コンディション不良とけがに苦しむシーズンとなった。「素直にうれしいが、ほとんど力になれなかった悔しさが大きい」との言葉は偽らざる本音だろう。
湯浅投手の座右の銘は「雲外蒼天」。雲をつきぬけた先に青空が広がっていることから、「努力して困難を乗り越えれば明るい未来がある」という意味。投手人生はまだまだ長く、雨の日もある。一番悔しいのも、苦しんでいるのも、先を考えているのも当人だろう。
昨シーズンやWBCで見せてくれたあの快晴のような活躍は、色あせることはない。特に力になれそうなことは見つからないが、きっとまた、雲を突き破ってすばらしい活躍を見せてくれる、それを信じて待つくらいはできる。
(R)