歴史に関する本は小説、ノンフィクション問わずよく読む。歴史の面白さは人にあり、はるか昔の偉人の意外と人間臭いエピソードに触れると親近感がわき、名も伝えられていない人たちの息づかいを感じられる。さまざまな講義を取材する機会はあるが、歴史好きとしては古文書を解説する講演会は非常に興味深い。
この地域の古文書の講義となれば、三重大の塚本教授が「控えめに評価しても、こんな充実した古文書はまずない」と語る尾鷲組大庄屋文書の存在は外せない。事務的な内容だからこそ、かつての尾鷲の日常が生々しくよみがえるよう。
先日のみらおわ講座による古文書講座は、もめごとにテーマをしぼったこともあり、かなり面白かった。ろくでなしが炭焼きの仕事の前金を受け取ったのに行方不明になったり、家督相続で一族が二分する騒ぎになったりと、現代にもあるようなことでもめている。人が生まればいさかいがつきもの、ということか。
人はやがて死に、時代は移り変わる。この地にかつて生きていた人が、今の私たちがそうであるように、泣いたり笑ったりして生きてきた。そして、未来の尾鷲にもそんな光景が続けば良い。
(R)