紀北町の有償交通システム「おでかけ応援サービスえがお」の本格運行が始まり、来月で1年を迎える。コロナ禍で観光での活用が見いだせない中、運行件数を堅調に伸ばしている。民業との兼ね合いや運行範囲などの課題もあるものの、過疎化と高齢化に向けて町内の交通網の充実は重要な課題で、稼働台数も3台に増やして利用時間も拡大するなど、体制を強化して利便性を高める姿勢を見せている。
「えがお」開始以降の実績を見ていて、海山地区と紀伊長島地区の利用の差がざっと10倍くらいあるのが興味深い。本格運行前の実証実験から見ればともに利用件数は倍増しており、比率を保ちながらともに数を伸ばしている。乱暴な見方をすると、「えがお」は紀伊長島で軌道に乗り、海山は交通システムに頼らないまちづくりが既にできている、と仮定してみる。
交通システムの利点は多岐にわたるが、「いつでも好きな場所に行ける」ことと「交通サービスを使わなくても生活に困らない」ことが両立できるのが最良。両地区の差はおそらく複合的なものだとは思うが、長い目で分析していくと、新しいまちづくりの形が見えるのかもしれない。
(R)