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社説「住民のための議論の場に」

 民主国家の日本では、地方自治でも間接民主制が採用されている。選挙で自分たちの代表を選び、選ばれた議員は、議会で税金の使い方やルールを決め、地域の未来の姿を描くことが仕事になる。住民の代弁者であり、行政と住民とのパイプ役と言えばわかりやすいだろうか。当局と議会が両輪となって政治を進めることがまちの発展の近道だ。逆を言えば、議会で十分な議論ができなかったり、本来議論すべきところから逸脱したりするようでは、そのまちの住民にとって不利益と言える。

 先日の新宮市議会3月定例会で、ある議員がほかの議員から一般質問で侮辱を受けたとして、処分要求を提出。それを受け議会は議員7人で構成される懲罰特別委員会を設け、元々24日までとしていた会期を4日間延長して審議にあたった。処分要求を出した議員は、自身が関わる新宮市と元市議の間の裁判をめぐって物議を醸(かも)していた。今回焦点となった一般質問もそれをめぐってのものだった。その議論は本会議の場面のみにとどまらず、事前の常任委員会でも行われた。多くの職員や議員がその時間は拘束されていたことになる。
 
 処分要求に関して言えば、要求を出された側の議員も一般質問の中で明らかに趣旨を逸脱した表現や過激な比喩(ひゆ)などがあった。本人が弁明の中で反省の意を示していたことからわかる通り、市民の代表たる議員が公の場で論ずる以上、それはたしかに是正されるべきものである。
 
 一方、議会で「元市議に対しての裁判のことがいつまでもこの議場で話題になること自体おかしい」と指摘があったように、この案件の結論は裁判に委ねられており、議場でその判決の解釈やそれにまつわる議論を起こすことそのものが事態を複雑化させている。まして当局にはこたえる材料もない。処分要求で懲罰を課すことが否決された後も、議長から指名されていない規則外の発言が飛び交う場面が見られ、一瞬場が乱れた。
 
 職員や議員の給料は税金であり、いわば勤務している「時間」も市民などによる税でまかなわれている。さらに元市議は現在一般市民である。議員からは規則で規定されている「表現の自由」という主張が強調されていたが、それ以前に、議員の役割として市民の利益になる、生産的な話し合いが行われるべきではないか。
 
 各市町村の3月定例会では、一般質問で新年度予算やまちの諸課題について質問する議員が多く見られたが、質問時間が極端に短かったり、当局の答弁をうまく引き出せないまま終了したりする議員もいた。一般質問は議員の仕事ぶりを住民に示す最もわかりやすい手段。しっかりと準備したうえで、是々非々の姿勢で臨んでもらうことを望む。
 

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