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社説「災害教訓 後世に生かそう」

 静岡県熱海市で3日に発生した大規模な土石流。ものすごいスピードで土砂が押し寄せ、住宅や車などあらゆるものを飲み込んでいく映像に胸が痛んだ。今なお行方不明者の捜索活動が続いており、何とか早く見つかってほしいと願う。

 10年前の2011年9月3日夜から4日未明にかけて、当地方は台風12号による豪雨に見舞われた。台風本体の雨雲がかかる前から雨は降り続き、広範囲で総雨量1000ミリを超えた。結果、河川の氾濫と山腹崩壊による土石流や地滑りが発生し、那智川流域をはじめ "山津波"に襲われた箇所がいたるところで発生した。この紀伊半島大水害をきっかけに、気象庁は大雨等の特別警報の運用を始めた。通常の警報の発表基準をはるかに超える豪雨が予想され、重大な災害の危険性が著しく高まっている場合に発表、最大限の警戒を呼び掛けるもので、年月が経過するたびに運用方法や、各自治体の避難に対する指示も変化している。
 
 自然災害は避けられないが、被害を最小限に食い止めるには、過去を検証し教訓をもとに点検、そして未来に備えることが大切だ。今回の熱海の土石流では、盛り土が被害を大きくした可能性が指摘されている。これを受けて和歌山県は、県内の盛り土で造成された場所を総点検する方針を示した。相当数あるようだが、点検箇所の危険性の評価など、必要に応じて専門家に意見を求めるという。点検の結果、危険が認められる箇所については情報公開や早急な対策が必要だ。
 
 今回の熱海の件で気になったことがある。それは行方不明者の氏名公表。被災後2日半が経過した5日夜に所在不明者として64人の氏名が公表され、その後、連絡が取れるようになった人が約40人いた。こうした生存情報は、行方不明者の捜索範囲の絞り込みにつながり、ひいては要救助者の助かる可能性を高める。
 
 個人情報保護の観点から難しい判断だったと思われるが英断といえるのではないか。昨今の社会のつながりの希薄化で、隣人がどのような人なのか分からないといったことも少なくない。また、コロナ禍の分散避難で親類宅やホテルに避難する人もいる中、避難所だけの集計で生存者や不明者を全て確認するのは難しい。今回の公表で自分の名前を見て連絡をした男性の一人は「公表してもらってよかった」と話す様子が報じられていた。各自治体は災害時の対応の中に、情報公開の在り方についても指針を作っておくべきだ。
 

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